畳職人は10年で、95%完成する

 IT業界が不人気、という話題は、IT業界にいるものとしてスルーしておくわけにはいかない。
 IT業界の問題点というよりも、視点を変えて、畳職人という古式ゆかしい業界にいた経験から、IT業界における技術者の立場について考えてみたいと思います。(もっとも技術者と職人を比べると言う前提自体、間違っているような気もしなくはないけど、職人はこういうキャリアプランで生きてますよ、ということを知ってもらえば幸いです)

 僕は、畳職人5年、Web業界5年、働いてきましたが、IT技術者と職人の「スキルの性質」は相当異なり、その最大の違いはスキルの上限レベルが決まっているかどうか、ではないかと思っています。

 職人(ここでは特に畳職人)の技術レベルのマックスをLv.100とした場合、学校に通うなり師匠について学ぶなりで5年も真面目に働けばLv.90くらいには普通に成長できます。実際、畳職人の経験5年で畳技能士2級の受験資格が与えられますので、5年でとりあえずは一人前と言えるでしょう。

 そして10年も仕事をすると、レアケース(茶室などのイレギュラーな規格、特注畳などの変わったリクエスト)にも何度か遭遇し経験値を積みつつ、畳作りの基本スキルの精度も上がってきますので、真っ当に仕事をしている職人であれば、Lv.95くらいになっています。10年経てば立派な畳職人な訳です。そして、残りの畳職人人生を賭して、Lv.100を目指していくことになります。

 10年でLv.95まで来たのに、あとレベルをたった5つ上げるために50年、60年かけることになりますので、大体Lv.95くらいになったらその後必死になってスキルを研鑽していく畳職人はいません。通常業務ではその必要も無いですしね。50年、60年かけてレベルを5つ上げるという修行にも似た作業に耐えられる人のみが名人という称号を得ることができるのです。

 なぜスキルの上限レベルが決まっているのか?それはクリエイティブな要素が全くないからです。正解がひとつしかない、と言ってもいいかもしれません。畳職人の仕事は、間取りに合う畳を作ることだけですので、隙間無くピッタリ収まればそれが正解なのです。

 さて一方、IT業界ですが、こちらは仕事に正解はありません。お客さんのニーズを解決する、というお題目が与えられていますが、これが正解だ!というものはありません。正解が分からない中、ベストを求められるのは相当プレッシャーがかかる仕事だと思います。しかもまずいことに職人気質は限りなく正解を目指してしまいます。山を越えて、その先に高い山が現れたとしても、心が折れずにまっさらな気持ちで挑んでいけるその生き甲斐を見出すことができることが出来る人のみがIT業界で生き残れるのではないだろうかと思います。

 全然比較になっていませんが、IT業界は仕事の「枠」が不明瞭なんでしょうな。人月でコストを計算することから見つめ直さないといけないのではないでしょうか。

 

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