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イシンバエワが練習で4m80cmしか飛ばない理由

 エレーナ・イシンバエワはロシアの女子棒高跳び選手。先日の北京オリンピックでも5m5cmという世界記録で金メダルに輝きました。今までに24回も世界記録を塗り替えてきたセルゲイ・ブブカを髣髴とさせる活躍を見せています。

 ところが、イシンバエワは練習では4m80cmしか飛ばない、と日テレの番組で語っていました。(このときの明石家さんまとのやり取りはとてもチャーミングで素晴らしかったですな!)

 世界記録を連発しているものの、練習では4m80cmを繰り返し飛ぶんだそうです。世界記録が5m5cmってことで、練習では5m10cmくらいをすでに飛べてるんじゃないか、と思いがちですが、世界記録を狙うのは本番の大会だけ、とのようです。

 オリンピック会場は独特の雰囲気に包まれていて、100%の力を発揮できないまま終わってしまう選手も多い。自己ベストに遠く及ばない記録で会場を去っていく選手を北京オリンピックでどれほど見たでしょうか。一方で、イシンバエワ選手のように飛ぶ度に世界記録を更新していく選手もいるわけですが、その違いは何か?。やはり練習スタイルにあるんじゃないかと思うのです。

 イシンバエワ選手の4m80cmを繰り返し飛ぶというのは、どんな状況でも100%の力を引き出すことに主眼をおいた練習と言えます。彼女にとって4m80cmはほぼ100%成功する高さなのでしょう。そこを繰り返すことで、4m80cmは確実に飛べるという自信に繋がり、引いては大会での安定した結果になって返ってきているのです。

 練習のときに5m10cmにチャレンジしてて、10回に1回は成功していたとしましょう。その状態で大会に出場すると、5m10cmをクリアした自信と、でも10回に1回しか成功していないという力量の間にギャップが生じます。飛ぶ前には、5m10cmを飛べたという成功体験により自信満々でしょうが、一回失敗すると、成功率10%という事実が重いプレッシャーとなってさらに選手を縛っていきます。そうなると100%の力すら発揮できなくなり自滅してしまいます。練習で5m10cmを飛べた自分があたかもドッペルゲンガーのごとく見えるでしょう。

 ですので、練習時に限界に挑むのではなく、あえてハードルを低く設定し、それを完璧にクリアし続けることで、本気出したらもっとやれるかも、という意識を刷り込んでいくことが本番に強い選手を育成するためには有効ではないかなと思います。

 限界に挑み続ける練習ではなく、勝ち癖をつける練習こそ日本の選手に重要なのではないか、と考えるのですがいかがでしょうか。

働きたい会社が、信用できない会社だったらどうすべきか?

 義妹が転職活動中だ。そして、A社、B社と2社の最終面接までこぎつけた。

 A社:第一希望だけど、契約社員
 B社:第二希望だけど、正社員

 義妹としては、A社に行きたいんだけど契約社員なんで、今後のことを考えるなら正社員として雇ってくれるB社かなぁなんて悩んでいた。んで、一足早くB社で採用が決まり、7月上旬より働くこととなった。

 そういった訳で、A社にお断りの連絡を入れたところ、「分かりました。ではうちでも正社員として雇うのでうちに来てください」と言われたそうな。

 義妹が元々働きたかったのはA社であり、ネックとなっていたのは契約社員ということだけだったので、それが正社員として雇ってくれるのであれば、喜ばしいことなのだがどうも腑に落ちない。

 どういった形態で働くかは、相当重要な問題だ。それを採用担当者のさじ加減でコロコロと変えるような会社が果たして信用に値するだろうか。値引き交渉じゃあるまいし、もう一声!みたいなノリで採用活動をされてはたまったもんじゃない。

 もう一点は、「これこれこういう理由で就職先が決ったので御社への就職はお断りさせてください」と伝えているので就職先が他に決ったことをA社の採用担当者は知っている。それでも、うちに来てください、と引き止めるのは、義妹に対してすでに内定が出ている会社を断れと言っていることと同じで、言わば義妹に不義理な行為を強いていることに他ならない。自分のところが良ければそれでいいだろう、みたいな社風を感じるのは、うがち過ぎだろうか。

 義妹は悩んではいるが、A社で勤めることになるだろう。自分が行きたかった会社だから。でもこの後の展開を考えると暗鬱とした気持ちになってくる。

 最初聞いていた話と全然違う!みたいなことにならなければいいが。

「古畑中学生」は僕だった

(注:以下の記事は、2008年6月14日に放映された「古畑中学生」のネタバレを含みます。未見の方はご注意ください)

 古畑任三郎の中学生時代を描いた「古畑中学生」。想像以上に面白く、予想外に重いテーマだった。推理ドラマと思いきや、中学生の内面の成長を描いた青春グラフィティだった。

 嬉々として推理ゲームに興じる古畑少年は、古畑任三郎ファイナル「今、甦る死」における藤原竜也演じる堀部青年と全く同質の存在であり、唯一の違いは「本質を見抜け!」と喝破してくれた大人がいたかどうか、だけだったのではないか。周りに、森脇教頭ではなく、野々山先生しかいなかったとしたら、古畑任三郎の正義感は育成されなかっただろう。

 そう考えると、古畑中学生における殊勲賞は原田泰三だったのではないだろう。友達のような先生を演じつつ、実はそれがフェイクだった瞬間の温度差の演技は見事だった。こういう大人に成りきれていないオトナが一番信用ならないという恐怖感を感じさせてくれた。

 子供の戯言に友人のように付き合ってくれる物分りの良いオトナよりも、現実をしっかりと見つめその本質を見抜くことの(たとえそれが自分の思い描いた理想でなくても、だ)重要性をしっかりと伝えてくれる嫌な大人こそ、中学生くらいの年頃の人間には必要なことでは無いだろうか。中学生のメンタリティが回りの大人の影響をモロに受けることをあらためて考えた次第だ。

僕に古畑少年と同じような過ちを犯した過去がある。
当時、シャーロック・ホームズを愛する一高校生だった。

 高校一年の時に、同級生Aが殴られた。
 目の周りに大きな青痣(あざ)ができ、休み時間でも学生帽を目深に被って傷を隠していた。誰にやられたのか、知っているものはいなかった。
 僕は、幼馴染ということもあったのだろう、一体何が起きたのか?誰にやられたのか?を秘密裏に調べてくれないか、と彼のお母さんから頼まれた。
 初依頼に浮かれていた僕は、彼の友人はもちろん、他のクラスの不良にまで、聞き込みを行った。

「Aのお母さんから頼まれたんだけどさ、Aの殴ったやつ知らない?」

 僕は浅はかな探偵だった。
 僕が、Aのお母さんから頼まれて色々と調べていることがあっという間に学年に広がり、当然Aが殴られたことも学校中に広まってしまった。僕が言いふらしたようなものだ。Aは青痣が消えるまで学校を休んだ。1週間ぶりに学校に出てきた彼と話すことはもうなかった。

 後から風の噂で、Aの青痣は中学生に絡まれて殴られてできたことを聞いた。それならばなおさら、そっとして欲しかっただろう。

 僕は人の痛みすら想像できない馬鹿だった。自分のやっていたことは「善」だと信じて疑わなかったとんだ偽善者だった。

 善と悪なんて、立場が変わればいともたやすく引っくり返る薄っぺらいものだ。だからこそ、「善悪」を高らかに叫ぶものを信じないし、だからこそ物事の本質をきちんと見抜く目は養っておきたいといつも思っている。

 僕はちゃんと大人になっていますか?森脇先生。

日本水泳関係者は、「たった一人のオリンピック」を読むべき

 英スピード社製の水着レーザーレーサーを着た水泳選手による記録ラッシュが続いた。これは米国においても同じような状況で、これほど水着に注目が集まったことは無いだろう。

 泳ぐのは僕だ、という北島選手の矜持もよく分かる。まるで選手の力ではなく、100%水着の力で結果が残せた、と言わんばかりの世論に対して、青島刑事よろしく「水着が泳いでいるんじゃない、選手が泳いでいるんだ!」と声を大にして叫びたいだろう。

 一方、ごく普通の大学生でありながら、「道具」を有効活用し、オリンピック出場権を勝ち取った選手もいる。それが山際淳司の「スローカーブを、もう一球」 (角川文庫)に収録されている「たった一人のオリンピック」の主人公「津田真男」である。もちろん実話だ。

 津田青年は、23才のとき、唐突にオリンピックに出場しようと思い立つ。しかしオリンピックに出ると言っても一朝一夕で出れるような種目は、当たり前のことだが、皆無に近い。団体競技や選手層が厚い種目では、遅れてきたルーキーに1%の勝機も無い。そこで彼が選んだ種目は「ボート」のシングルスカルだった。

 いくら選手層が薄い種目といっても、いくつかのハードルが待ち受けていた。
 まずは道具。レース用のボートを作っているメーカーは日本に一社しかいない(昭和50年代の話なので今とは事情が違うのかもしれない)。そこにボートを発注するのだが、なかなか作ってくれない。「一度もボートに乗ったことのないド素人のボートが作れるか」という理由だ。

 そして練習。津田青年の唯一の師は、「図解ローリング」という一冊の本。しかし彼は日本のボート界に積極的に教えを乞うことはしない。日本のボート界は伝統重視で、技術的には何の進歩もしていない、と判断したからだ。

 日本のボート界が閉鎖社会であることが伺えるが、だからこそ津田青年に勝機があったとも言える。

 ようやく出来上がった自分のボートが、何十年前に作られたボートと寸分違わぬことに衝撃を受けた彼は、ボートの改造に着手する。ボートの軽量化を計るため、機能性・耐久性を損なわない程度に、フレームやボディに穴を開けていく。オールの握りの部分も自分用に改良を加えた。 

 ボートは競技人口は少ないながらも歴史がある競技である。その歴史の中で、先輩から後輩に盲目的に受け継がれてきた漕ぎ方、というのも存在したが、津田青年はそんな伝統に縛られることなく、海外のボート選手のテクニックを積極的に取り入れる。
 
 そして国体や日本選手権を含む、国内大会18連勝、という記録を打ち立てるのである。モスクワオリンピック代表に選ばれるものの、日本はモスクワオリンピックを辞退したために、オリンピック出場という夢は叶わなかった。

 ボートに手を加える、という行為がボート関係者に与えた影響は少なくない、と思う。ボートを改造するなんてあいつはズルイ、卑怯だ、あいつの漕ぎ方は邪道だ、などと非難されたかもしれない。生え抜きのボート関係者であればあるほど、津田氏の存在は苦々しく映っただろう。しかし、津田氏は、何が何でもオリンピックに出るんだと言う強い意思、そしてたゆまぬ努力で、たったひとりの力で代表権を獲得した。

 翻って、現在の水泳関係者、特にスポーツメーカーに、津田氏のような何が何でも勝つ、という意思を感じることができない。もちろん研究開発は怠っていたとは思わないが、横並び意識が働いてはいなかっただろうか。予定調和的なぬるま湯の開発競争しかしていないのではないか。

水着新素材提供の山本化学工業が悲鳴 (nikkansports.com)

山本化学工業は好記録連発の英スピード社製より水の抵抗が少ないという新素材を開発して、日本水連から改善を要求された国内メーカー3社に提供、うち2社が5月30日に採用を発表した。だが、採用後に2社へ協力を申し出ると、デサント社は「情報を開示する約束はしていない」と断り、アシックス社は無回答だったという。

 この後、山本化学工業のバイオラバーを「一部」使った試作品は急遽作られたが、全体的に使った水着のサンプルはアシックスもデザントも作っていないはずだ。結局、バイオラバーの真価の程は発揮できないまま終わってしまった。

 努力が評価されるのは勝利者だけだ。
 本当に良いものを作りたい、選手の勝利に貢献したい、というならば、自社の今までの研究を反故にしてまでもあがくべきではないのか。それができないスポーツメーカーは一体何のために存在しているのだろうか。

「ホースニュース馬」休刊に見る、競馬新聞のあり方

「ホースニュース馬」が休刊(netkeiba.com)

 ホースニュース馬の休刊がオフィシャルサイトでも発表された。競馬関係者の中でもっとも知名度が高い(と思われる)井崎脩五郎が在籍していた競馬新聞で、競馬の神様、故大川慶次郎もかつては在籍していた(僕は知らんかった)という老舗だったが、時代の波ということだろうか。

  中央競馬は大抵、土日に開催されるが、「どんなレースがあって、どんな馬が出走しているか」を知りたい場合、情報入手経路は大きく分けて、2つ。紙媒体とWebである。

  紙媒体は、JRAが発行する「レーシングプログラム」「スポーツ新聞」「競馬新聞」の3つに分けられる。

  価格 情報量
レーシングプログラム ◎(無料) ×(基本的な情報のみ)
スポーツ新聞 ○(110円) △(主要レースは、馬柱(※)も掲載)
競馬新聞 ×(410円) ◎(全レースの馬柱が掲載)

(※馬柱:出走馬の今までの戦績。大抵、直近5レースの出走情報が掲載されている)

 メリット・デメリットを挙げてみたが、メインレースやGIだけを楽しむようなライトなファンはスポーツ新聞で十分だし、1Rからがっつり競馬を楽しみたいってヘビーなファンは競馬新聞を買うというのが、今までの住み分けだった。

 僕も、どっぷりと競馬にハマっていたときには、土日毎に競馬新聞を買い求め(しかも1馬と勝馬の2紙)、週明けには競馬ブックで復習をするというありさまでした。1ヶ月8開催あったとして、競馬新聞400円×2紙×8開催+競馬ブック400×4週分で、計8,000円。 なんか、計算してて嫌になってきたが、月に8,000円を競馬新聞に費やしていたことになる。結構痛い出費だ。

 ところが、僕の場合、Webの登場により競馬新聞の意義はほとんど無くなってしまった。僕はJRDBという競馬データベースサービスを利用しているのだが、月額1,980円で出走馬のデータ、レース情報、結果情報などのデータが入手できる。もちろんこのデータは蓄積していくので、フェブラリーS、過去7年の結果を比較するってこともできるし、出走馬の全戦績なんてのも普通に出てくる。出馬表や出走馬の戦績くらいなら、Yahoo!スポーツの競馬でも十分に見れるし、情報収集の手段としての競馬新聞の存在意義は2000年辺りからほぼ無いに等しかったのである。

 競馬新聞の付加価値として、専門家の予想が見れるというのも有りはするのだが、専門家の予想に乗っかっておけば万事OKみたいなうまい話はあるはずもなく、結局その存在意義の向上には寄与していないと言えるだろう。そもそも競馬の醍醐味が、競馬の予想自体にあるので、予想家の存在意義ってなんだろね?って感じではあるのだが。

 有力馬の動向に関しては、Wikipediaにも記載されている。たとえば、昨年のクラシック戦線で人気を博したフサイチホウオーという馬がいるが、思った以上に活躍せず、アクシデントでもあったのか?と気になっていたのだが、Wikipediaのフサイチホウオーの項目にその不振の理由が書かれてあった。

フサイチホウオー(Wikipedia)

 もちろんWikipediaの情報が全て正しいというわけではないが、競走馬の動向について詳しく解説している競馬新聞サイトはほぼ皆無で、逆に言えば、Wikipediaで提供されている情報以上の情報を新聞紙上やサイトで発信できなかったために、ファンが離れていったことは間違いない。競馬専門紙としての取材力は飾りですか?どこで発表するのですか?

 競馬新聞の馬柱が充実しているといってもたがが知れている。Webという存在がある以上、情報量のアドバンテージは無いに等しい。とすれば、紙面に載りきれない、厩舎関係者の声であったり、追い切りの様子をWebでどんどん出していくべきではないか。たとえば、各レース番号の下に、QRコードが書いてあって、そこにアクセスすると、各馬の追い切り映像が流れたり、厩舎や騎手のコメントが見れたりなんて付加価値があってはじめて、410円という値段に妥当性が生まれるのではないだろうか。

 戦績からは見えてこないアナログな情報をデジタルで見せていく姿勢こそが、今求められていると思う。

互換インク - 賢い買い物なのか?安物買いの銭失いなのか?

純正インクと互換インクの画質の差が明らかに(日経パソコンオンライン)

 プリンターの純正インクってのは高いものだと相場が決まっています。
 プリンター本体の価格を安く設定し、インク代で回収するって話もあります。ケータイの本体をタダで配って、馬鹿高い通話料で回収するってのと同様のビジネスモデルでしょうか。その辺りの事情はWikipediaを参考にしてみてください。

インク(Wikipedia)

 そこでサードパーティが販売している割安な互換インクの登場となります。僕が持っているキヤノン MP810の純正インクカートリッジと互換インクの価格差を比べると、

純正インク(3,317円):Canon インクタンク BCI-7e 4色マルチパック
互換インク(2,335円):OHM インクカートリッジ BCI7 互換 インクセット 4P キャノン用 01-2905 INK-C07-4P

 となっていて、純正インクの7割程度で互換インクが買えます。んで、実際の品質の方はどうなんだ?ってことになるんですが、アリオンという企業が純正インクと互換インクの比較をしています。

インクジェットプリンタ用インクカートリッジ耐ガス性試験(PDF)
EPSONインクジェットプリンタ屋内耐オゾン性試験(PDF)

 電子情報技術産業協会(JEITA)の「デジタルカラー写真プリント画像保存性試験方法」に則った検証が行われたようですが、どちらの試験も、純正インクに軍配が上がったようです。

 一番の違いは経年劣化。上のPDFを見ると、互換インクがほんの数年で色褪せているのが分かります。また、個人の方が、実際の印刷物を74日ほど外気に晒して比較しているデータもありましたので併せてご紹介します。

純正インクと詰替用互換インク 印刷後の経時変化を見よう(電子回路で遊ぼう!)

 こちらでもやはり、互換インクの劣化が目立つ結果になっています。価格の分のクオリティはある、ということですね。

 じゃあやっぱり純正インクを買うべきか、というと、そうではないと思います。ぐるなびのクーポン券や始めていく場所の地図、のように何年も残しておかない一過性の印刷物は経年劣化なんて関係ないし、そもそもプリントアウトするときには、元となるデジタルデータがあるわけなので、劣化したら再度プリントアウトすればいいんじゃない?

 ただ年賀状やグリーティングカードのように、誰かに贈るような種類の印刷物は、純正インクを使うべきでしょうね。

 前出の試験結果は、「互換インクの質が悪い」という捉え方ではなく、「純正インクは高いけど長持ち」「互換インクは安いけど劣化する」という特徴が如実に分かったと捉えるべき。

 用途によって、インクも賢く使い分けないとね、ということだと思います。

棟梁が語った、職人にとって本当に大切なコト

僕が畳職人だったことは、過去に述べてきた通りだが、あれはまだ僕がぺーぺーのルーキーだった頃。仕事はまだまだ半人前だったけど、人並み以上の手間と時間を費やして、一生懸命丁寧に畳を縫っていた。

その様子を見た知り合いの大工の棟梁はこう言った。
「丁寧な仕事もいいが、もっとスピードアップしなきゃ」

丁寧な仕事が、職人にとって最重要命題だと信じて疑わなかったその当時の僕は、棟梁に噛みついた。

僕:スピードアップすると、仕事が雑になるじゃないですか!!
棟梁:しかしなぁ、チンタラチンタラやってたら飯は食っていけんぞ
僕:じゃあ雑な仕事をしろって言うんですか?!
棟梁:違う違う。丁寧な仕事をするのは大前提。職人にとって当たり前。でも時間をかけて丁寧に仕上げるのは素人でもできる。それを仕事の質を下げることなく、スピードアップを目指すのが職人だ。

目からウロコが落ちるというのは、こーいう状態を言うのだろう。
職人とは、良い仕事をすることが最終目標ではないのだ。腕を磨くことなど、職人となった以上、当たり前の義務に過ぎない。仕事の質を維持しつつ、極力時間をかけない、この相反する命題を高いレベルで両立させるべく精進するのが、職人の本分なのだ。それに気付いたとき、職人道の奥深さを垣間見たよーな気がした。

良い物を作りたい、良い物を作ることにこだわりたい、というのは職人の「サガ」だと思うのだが、一方でそれは仕事であるという意識も持っていなければならない。僕も職人気質なので、多少時間がかかっても良い物を納めればいいんだろう、という考えが頭をもたげてくるが、そのときにはこのエピソードをいつも思い出すようにしている。

空気を読めない(KY)、は華麗な先祖帰り

・場の空気
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A0%B4%E3%81%AE%E7%A9%BA%E6%B0%97(Wikipedia)

 新語・流行語大賞にノミネートされた「KY」(空気読め、空気読めないの略)
 結局のところ、日本人の悪癖として忌み嫌われた「本音と建前」が現在に蘇っただけじゃないですか。空気を読むとはつまるところ、建前に隠された本音をそれとなく察する、ということに他ならない。

 やれ個性の時代だとか、グローバリゼーションがどうのこうの言っても、本質のところは何も変わっていないということでしょう。しかも若者が普通に使っているということで(ほんとに?)、日本人体質は脈々と受け継がれているということですね。もちろんこれは本音と建前を使い分けることが悪いというわけではなくて、海外ではその「何も言わなくても心情を察する」というのは、美点ではなく単なる引っ込み思案だと思われますよ。ご注意あれ。

 色々と調べていたら、Wikipediaに「場の空気」という項目がありましたので併せてご紹介しておきます。ほんと、こーいうのは誰が追加するんでしょうね。無駄に充実してるけどさ。

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