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電王の失速っぷりに仮面ライダークウガに想いを寄せてみる

 仮面ライダー 電王の失速ぶりが著しく、2クールくらいでいいんじゃないのか、と思ったりもする。平成仮面ライターシリーズはいつも中盤くらいまでは面白いんだけど、なんかグダグダしちゃって終わりを迎えるパターンが多い。この辺は戦隊シリーズが年中を通して安定感を持って楽しめるのと対照的だ。

 仮面ライダーでは敵が等身大ってことで、強さのインフレが起こりにくいという要因があるかもしれない。そのため敵の正体に含みを持たせて引っ張るんだけど、結局、膨らんだ伏線を回収できるほどの答えができていないのが常である。ここ数年で一番面白かった仮面ライダー カブトと言えども、その呪縛からは逃れなかった。

 閑話休題。
 平成仮面ライダーシリーズの方向性を決定付け、しかも僕の中では未だにぶっちぎりのマイベストが、「仮面ライダー クウガ」である。オダギリジョーの初々しい演技が光り、葛山信吾演じる一条刑事とのコンビネーションが最高だった作品だが、やはりいわゆる仮面ライダーもののお約束の世界観に、リアリズムを吹き込んだ実績はやはり大きい。

 幼い頃、昭和仮面ライダーを見ていた僕は、常々ギモンを抱えていた。
 「なぜ敵怪人が一体づつしか登場しないのだろうか?」
 本当に日本や世界を支配したいと思うのなら、怪人を大量に導入すればいいじゃないか。仮面ライダーがいくら強いからといって、日本各地にたくさんの怪人が同時に出現すれば、全てフォローをしきれるものではない。だのになぜ?一体づつしか登場させないのか?不思議だった。

 他にも、成功目前までいった日本占領作戦があったとする。すんでのところで、仮面ライダーに阻止されたとしても、欠点を反省しつつ、再び同じ作戦を遂行すればいいものをそんなことはしない。次回は別の作戦を立てるのだ。あいつら、馬鹿か。小学校に行くか行かないかの僕ですら、敵組織を馬鹿にしてた。

 クウガでも、毎回怪人は基本的に一体づつしか出てこない。仮面ライダーのフォーマットを守っているわけだが、従来の敵組織とは決定的に違う。その設定の巧みさには、ほんと感心してしまう。

 敵怪人の目的、それは人間を殺すことにある。人間が動物を狩るように、敵怪人は人間を狩るのである。そしてその狩りは一定のルールに基づいたゲームの体裁をとっている。敵怪人は、自分が決めたルールにそって、殺人していく。そして無事に予定殺人者数をクリアした場合には、怪人ヒエラルキーの上位に登ることが許される。そしてランクが上がれば、さらに複雑で達成困難なルールの殺戮ゲームに挑むことになる。

 敵同士はあくまでもライバルなのだ。蹴落とす対象でしかない。だから一体づつ出現するし、仲間がクウガにやられようとも気にしない。むしろ、仲間が倒されることを願ってさえいる。ライバルが減るからだ。そーいう生来の戦闘種族がクウガの敵であり、人間狩りをゲームとして楽しんでいるから、大量殺戮兵器など使用しないで、基本的に肉弾戦で戦いを挑んでくる。(そーいうチマチマした殺人が面倒くさいって怪人も中にはいて、手っ取り早く飛行機を落としたりして、効率よく殺人者ノルマを達成しようとしてたりしてた。そんな敵怪人の個々の個性や、敵怪人独自の言語や文化などがストーリーに深みを与えていた)

 それで最終回のひとつ前の回。怪人達のヒエラルキーの頂点に立つ最強の敵怪人と対峙するクウガ。吹雪が吹きすさぶ中、殴りあう両者。クウガと怪人は殴りあい、傷つけあう。そして、時折、雄介と怪人の人間体(怪人は普段人間の姿をしていて、世間に紛れている。最強の敵怪人の人間体はあどけない少年の姿)が血まみれになって殴りあうイメージシーンが挿入される。

 この雄介と少年が殴り合うシーンが強烈。顔を朱に染め拳をふるう少年、顔には満面の笑みを浮かべている。戦闘種族の彼にとって、戦闘と殺戮こそが喜びなのだ。一方、主人公・五代雄介は泣いている。泣きながら拳をふるう。争いにしか喜びを見出さない敵怪人に対し、またその犠牲になった人達を忍んで、、戦いの虚しさを感じながら。そして殴り合って、この回は終わりである。

 最終回が気になるでしょ?一体どっちが勝ったのさ?って。どーいう展開になったのさ?って。
 そして、最終回、
 最終回冒頭、警視庁の一室では、刑事達が敵怪人たちとの捜査ファイルを整理している。五代と共に闘った刑事達は、五代のことを語りだす。(五代雄介=仮面ライダークウガ、ということは警視庁も知ってるし、協力もしてる。一条刑事とは親友だし。周りの知人友人もみんな知っているのね)「あいつはいいヤツだったなぁ」みんな口々にする。

 なんと最終回は、知人友人が五代雄介の思い出話を語ったりして丸々一話が終わるのだ。その会話から、五代雄介がラストバトルに勝利し、どっかに旅立ったというのが分かる。五代雄介はこの回、ラスト数分しか出てこない。どっかの海外の浜辺で外人の子供達と戯れているだけ。

 最後の最後まで、とんでもないことをやる番組だった。視聴者はおそらく最終回は壮絶なラストバトルの続きとエピローグで終わると思ってたはずだ。僕もそうだった。すごい肩すかしを食らってしまった。だけど、五代雄介という、仮面ライダー史上最も争いが似合わないキャラクターにとっては、これが正解だったんだなって思う。爽やかな後味を残して、五代は旅立っていった。

 最終回にラストバトルではなく、余裕を持たせたエピソードを持ってきた時点で、平成仮面ライダーの金字塔となることは決定付けられたといえるかもしれない。

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