ただの芸能人本だと思っていると火傷する、ホームレス中学生

 王様のブランチで、現在ベストセラー街道驀進中の「ホームレス中学生」の執筆者、麒麟の田村 裕がインタビューに答えていた。
 ちょっとうろ覚えなんだけど、「その印税をどうしますか?」との問いに、「世話になった方々に何らかの形で返していきたい」と答えていた。

  優等生的な答えだなぁ、と思ってそのときは軽く受け流していたんだけど、気になって「ホームレス中学生」を読んでみた。読む前は、ネタとしてお馴染みの公園で暮らしていたホームレス話が中心の芸能人本の類で、最後あたりに親兄弟のハートウォーミングな話なんか出てきたりして、まぁ笑ってちょっと泣けるレベルの本だと思ってた。

 (この後、ネタバレというか、内容について触れてますので未読の方はご注意ください)

  実際、最初の1/3くらいまでは、父親の借金に起因する一家離散の話や公園で寝泊りする「ホームレス」エピソードが綴られているが、これは面白エピソードの類で、たしかに想像を絶するシチュエーションには違いないが「ネタ」の域を脱していない。

 この本の真骨頂は、そもそも最愛の母親を亡くし、圧倒的な絶望感・虚無感を抱えたまま生きている少年の姿が、様々な面白エピソードの裏に潜んでいるところにある。なんといっても、田村少年の望みは、人の役に立って死ぬことである。母親の死、そして一家離散という大波が田村少年を人生の漂流者にしてしまったのだ。

 食事も満足に食べられないという肉体的な飢餓感だけではなく、母親という最愛の存在を無くしてしまった喪失感、このダブルの満たされぬ想いを抱いて、それでもまっすぐに生きている田村少年の姿はあまりに切ない。

 肉体的な飢餓は、周りの人たち(近所の人、友達の親、親戚)の尽力によって何とか回避することができ、また高校の担任との交流によって心にポッカリ空いた穴を塞ぐことができた。王様のブランチで、世話になった人に返したい、という言葉がきれいごとではなく、100%本心なんだろうと信じられる。もしかしたら途方の無い自責の念を抱えて今も生きているかもしれない。

 世知辛い世の中において、人間の「情」というものをもう一度信じたくなる本であることは間違いないのだが、この本を通して自分自身の闇と向き合うことになるかもしれない。それほどこの本のテーマは、重く深い。

  1. コメントはまだありません。

  1. トラックバックはまだありません。