(書評)自分の小さな「箱」から脱出する方法



 論語では「義を見てせざるは勇なきなり」と解いています。目の前で困っている人がいるのに、手を差し伸べようとしないのは勇気が無い、という意味合いですが、「自分の小さな「箱」から脱出する方法」(大和書房刊)は、その「義を見てせざるは勇なきなり」を米国的なアプローチで解説している本です。

 一時期話題になった「鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール」も言わんとしている方向性は一緒なのですが、こちらはそれこそ先祖の霊が泣いていますよ的な、お涙頂戴なアプローチなわけです。理ではなく情に訴えると言うか。読者の9割が泣いたそうですが、僕は少数派みたいですね。読む価値が無いとまでは思わないけど、自分自身と真摯に向き合う覚悟がある人は、「自分の小さな「箱」から脱出する方法」をオススメします。

 さて「自分の小さな「箱」から脱出する方法」では、「箱」という表現で自己欺瞞を説いています。つまり見て見ぬ振りをしたときに、自分を正当化するために言い訳をしますが、それが自己欺瞞の第一歩です。自己を正当化すると、他者を貶め、現実を自分の都合の良いように捻じ曲げて解釈します。

 そして正当化した自分の行動を自分の性格として振舞っている内に、そうして箱をいくつも使い分け、箱の中からしか物事を見ないようになっていきます。箱の中にいる限り、他者は貶める対象としか捉えないので、夫婦、親子、同僚、上司、全ての人間関係がギクシャクする一方です。心に湧いた「義」や「仁」を無視して行動することが積もり積もって修復不可能な事態にまで発展してしまいます。

 Amazonでは冒頭の何ページかを読むことができるのですが、続きが気になった人はぜひお買い求めいただきたいと思います。こうした自己啓発系の書籍はほとんど読んではいない、というか(鏡の法則のようなうさんくさい本を結構多そうなので)避けていた分野なのですが、この本は理詰めと言うか、心ではなく頭で理解できたのでオススメです。

 いろんな自己啓発本やビジネス書がありますが、それらを読む前に、あるいはそういう本をたくさん読み過ぎて頭でっかちになってしまったときに、真っ先に読んでみてください。「オレばっかり損な役回りをやらされている」と人間関係に悩んでいる人はもちろん、「チームの生産性が上がらない」と頭を抱えている管理職の人もぜひ詠んでください。(今の上司なんて暗記するほど読んで欲しいところ)

 「箱」の外に出るための解決法も書かれていますが実践するのは難しそうです。しかしその道程は険しくても、キチンとその道筋は見えています。そこから逸れないように、一歩一歩歩いていけたらいいな、と思いました。

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